日系企業の株主配当実務ガイド——事前のコンプライアンス、税務手続、および租税条約に定める待遇
2026年9月28日 公開 ・ Denchi Advisory
中国に拠点を置く日系企業が、株主(特に非居住者株主)へ配当を行う際の実務プロセスと留意点を、会社法上の事前条件から、税務・銀行手続、租税条約の優遇税率の適用まで、5つのポイントで整理しました。
一、配当における会社法上の事前条件
株主へ利益を配分することは、単なる会社の自治事項ではありません。『会社法』の規定により、会社に当期純利益がある場合、過年度の欠損を補填して10%を法定準備金に積み立てた後(法定準備金の累計額が登録資本金の50%に達した後は、それ以上の積立は不要となります)、残った税引後利益は配分に充てることができます。
そこで留意すべきなのは、『会社法』が違法な利益配分の責任主体を株主から董事長、監事および高級管理職へと拡大している点です。規定に違反して配分を行った場合、株主は違法に配分された利益を返還しなければならず、責任を負う董事長・監事・高級管理職は、さらに会社の損失に対する賠償責任を負います。したがって、配当手続を開始する前に、利益処分案が合法的な株主総会または董事会の決議を経ていること、および配分額が「欠損の補填および法定準備金の積立後の残余の配当可能利益」の範囲内に厳格に限定されていることを確認する必要があります。
二、税務手続と銀行手続の並行推進
配当金を中国本土以外に送金するにあたっては、税務と銀行に関する二つの手続が関わります。一般的なプロセスは、まず税務申告および税金の納付を完了し、その上で完納証憑をもって銀行へ対外支払いを申請するというものです。しかし、各銀行が配当の送金に対する審査要件は異なるため、税務手続の準備と並行して、担当銀行へ必要な書類を同時に確認し、時間のかかる書類をあらかじめ準備しておくことをお勧めします。当社が担当した案件において、銀行から分配予定の利益に対する監査報告書の提出を求められた例があります。この種の資料の取得には時間を要しますので、早めに着手したほうがいいと考えられます。
三、税務手続の操作プロセス
現在、非居住者企業の配当に関する税務手続の多くは、電子税務局で完了でき、一般的な手順は以下の通りです。
① 非居住者企業の身分情報の収集。過去に当該株主の情報を収集済みの場合は、操作が不要です。
② 源泉徴収税の登録。初めて源泉徴収義務を履行する場合は、源泉徴収税の登録をする必要があります。
③ 越境取引契約情報の管理。越境取引契約(例えば配当に関する決議)の情報を登録する必要があります。
④ 源泉徴収企業所得税の申告および納付。源泉徴収の場合、非居住者納税者が租税条約に定める待遇を享受しようとする際は、さらに『非居住者納税者が租税条約に定める待遇を享受するための情報報告書』を提出する必要があります。
深圳の電子税務局では、さらに「対外支払総合税務処理(国際送金税務通)」モジュールを通じて、上記の複数の業務をワンストップで手続できます。ただし、具体的な手続は主管税務局により異なる場合がありますので、配当の開始前に主管税務局に確認することをお勧めします。
四、租税条約に定める待遇:自己判断、申告による享受、検査に備えて資料の保管
2020年1月1日より、非居住者納税者が租税条約の待遇を享受する方式は、「申告時に資料を提出する」から「自己判断、申告による享受、検査に備えて関連資料の保管」へと見直されました。多くの資料は申告時に提出する必要はありませんが、保管して税務機関の事後検査に備える必要があります。保管資料は主に以下のものです。
(1)居住者証明書。条約締結相手国の税務主管当局が発行し、非居住者納税者が所得を取得した年度または前年度の居住者の身分を証明する書類です。この証明書は株主が現地の税務当局へ申請して発行を受ける必要があり、通常ある程度の処理期間を要しますので、配当前に早めに申請し、取得してから申告を行うことをお勧めします。
(2)権利帰属証明資料。配当所得の取得に関連する契約、協議、董事会または株主総会決議、支払証憑など。
(3)実質的支配者の身分証明資料。配当条項の租税条約の待遇を享受する場合、株主が「実質的支配者」の身分を有することを証明する関連資料を保管する必要があります。
(4)その他の裏付け資料。非居住者納税者が、租税条約に定める待遇の条件に合致することを証明できると考えるその他の資料。
五、日系企業の留意点:香港株主と実質的支配者の認定
日系企業グループにおいて、香港子会社が中国本土の企業の持分を保有するというケースはよく見られます。香港の居住者企業が中国本土の居住者企業の持分を25%以上保有し、かつ「実質的支配者」の条件を満たす場合、配当の源泉所得税税率は10%から5%へと引き下げられます。この優遇税率の適用の鍵は、「実質的支配者」の身分の認定にあります。
『国家税務総局による租税条約における「実質的支配者」に関する問題についての公告』によると、以下の事柄は「実質的支配者」の身分の判定において不利に働きます。
(1)株主が所得を受領してから12か月以内に、所得の50%以上を第三国(地域)の居住者へ支払う義務を負っていること。「義務を負っている」とは、契約上の義務のみならず、契約上の義務がなくとも支払の事実が形成されている場合を含みます。
(2)株主が行う事業活動が実質的な事業活動を構成しないこと。実質的な事業活動には、実質的な製造、販売、管理などの活動が含まれ、税務機関は持分構造、人員配置、資金の流れ、意思決定メカニズム、リスク負担などの複数の側面を組み合わせて総合的に判断します。香港の中間持株会社の人員、資産、機能が限られ、単なる持分の通路的な存在に過ぎない場合、実質的な事業活動を有しないと認定される可能性が高く、5%の優遇税率を適用できないことになります。
⚠ 事例:最近、香港の中間持株会社が実質的な事業活動の特徴を満たさないことで、税務機関から「実質的支配者」の身分を否定された企業が現れました。すでに配分された配当について追徴課税を受けるだけでなく、配分予定の配当についても源泉所得税を仮計上する必要があり、関連金額は5億元を超えています。この事例は、税務機関による租税条約に定める待遇の享受に対する事後管理が次第に厳格になっていること、および「形式的なコンプライアンス」のみの持株スキームが実質性審査を通過することが難しくなっていることを示しています。
したがって、香港株主を有する日系企業に対しては、配当前に香港会社の事業の実質性について慎重に評価し、人員、拠点、意思決定機能、リスク負担能力などの実質的要素を備えているかどうかを確認することをお勧めします。確かに実質的に経営に従事し、かつ持分比率が25%以上に達している場合は、法に基づき5%の優遇税率を主張できます。実質性が不十分な場合は、事後調整による追徴および滞納金のリスクを避けるため、10%の税率を適用することが考えられます。
最後に、当社は配当に関するコンサルティングサービスおよび手続の代行サービスを提供しております。ご要望がございましたら、ぜひお気軽にお問い合わせください。
DENCHI(「デンチ」)は財務・会計・税務・税関を専門とするコンサルティング会社です。
◆ コアメンバーは四大会計士事務所、大手日系企業或いは税務機関出身のOB/OGの集まりであり、皆グローバルなビジョンを持ちながら、ローカルの実践経験を有している人たちです。現在、深圳及び広州2拠点に合計90名以上の専門家が在籍しています。
◆ 2013年設立以来、数多くの日系企業に税務調査対応、移転価格、会社再編などのサービスを提供しており、税務関連の経験が非常に豊富です。その他、日常顧問、法定監査及び税務監査などの業務も携わっており、日系企業の経営及び内部管理に力を貢献しています。
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本記事は DENCHI 公式 WeChat アカウント「Denchi advisory」の 2026年9月28日 配信記事をもとに編集・転載したものです。詳細は微信(WeChat)公式アカウントにてご確認いただけます。
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