中国の移転価格税制と移転価格文書の作成義務
2026年11月4日 公開 ・ Denchi Advisory
移転価格税制とは、親子会社やグループ会社など関連企業の間で取引を行う際、その取引価格を「独立した企業同士の取引価格(独立企業間価格)」に一致させることを求める制度です。中国では企業所得税法第41条から第48条に定められており、税務当局は独立企業間価格との差額を課税所得に加算できます。
中国に進出した日系企業は、取引規模にかかわらずこの制度の対象になります。さらに一定の金額基準を超えると「同期資料」の作成・保存が義務付けられ、税務調査の際に提出を求められます。
一、中国で作成が求められる3つの文書(同期資料)
中国では、国家税務総局公告2016年第42号に基づき、関連取引の規模に応じて次の3種類の文書を作成します。
| 文書 | 作成義務の基準 | 主な内容 |
|---|---|---|
| マスターファイル | 年度の関連取引合計が10億元超、かつ越境関連取引がある場合 | グループ全体の組織構造、事業内容、無形資産、資金調達、税務ポジション |
| ローカルファイル | 有形資産の移転 2億元超/金融資産の譲渡 1億元超/役務提供・無形資産の使用権 4,000万元超 | 中国法人の関連取引の詳細、採用した価格設定方法、比較対象企業の分析 |
| 国別報告書 | グループの連結売上高が55億元超で、最終親会社が中国居住企業の場合 | 国・地域別の収入、税引前利益、納税額、従業員数など |
金額基準は「いずれかを満たすか」で判定します。日本の本社が最終親会社であれば、国別報告書は日本側で提出する立場になりますが、中国子会社側でも関連情報の整理は必要です。
二、作成・保存と提出の期限
マスターファイルとローカルファイルは、企業所得税の年度申告期限(翌年5月31日)までに作成し、保存しておく必要があります。税務当局から提出を求められた場合は、30日以内に提出しなければなりません。
「調査が来てから作る」では間に合いません。比較対象企業の選定やベンチマーク分析には、それなりの時間がかかるためです。
三、調査された場合のリスク
1. 追徴期間は原則10年
特別納税調整による追徴は、原則として10年前までさかのぼることができます。通常の税務調査(3年・5年)より長い点に注意が必要です。
2. 利息が加算される
追徴税額には、基準貸付利率に5ポイントを加算した利率で利息が課されます。本税に対して相当の上乗せになります。
3. 文書の未作成自体がリスクになる
作成義務があるのにローカルファイルを用意していない場合、それ自体が調査の端緒になります。内容の妥当性以前に、「用意があるか」が見られます。
四、実務でつまずきやすいポイント
- 比較対象企業の選定:中国のデータベースから適切な比較対象を選べるかどうかで、分析の説得力が変わります。
- 機能とリスクの分析:現地法人が「単純な受託製造」なのか「販売機能を担う」のかで、目標とすべき利益率が変わります。
- 本社側の文書との整合:日本で作成したマスターファイルと中国側ローカルファイルの記述が食い違うと、説明が崩れます。
- 赤字の説明:連年赤字の現地法人は、「なぜ赤字なのか」を移転価格の観点から説明できるようにしておく必要があります。
五、DENCHIの支援内容
DENCHIは、これまで数十社の移転価格文書作成と、複数社の正式な税務調査対応に関わってきました。
- 移転価格文書(マスターファイル・ローカルファイル)の作成
- ベンチマーク分析、比較対象企業の選定
- 税務当局からの照会・調査への対応
- 事前確認(APA)の検討支援
「文書を作ったことがない」「本社と中国側で言っていることが違う」という段階からご相談いただけます。
DENCHI(「デンチ」)は財務・会計・税務・税関を専門とするコンサルティング会社です。
◆ コアメンバーは四大会計士事務所、大手日系企業或いは税務機関出身のOB/OGの集まりです。
◆ 2013年の設立以来、深セン・広州・東京の3拠点に100名以上の専門家が在籍し、中国公認会計士8名・中国公認税理士5名が在籍しています。
◆ 数多くの日系企業に税務調査対応、移転価格、会社再編などのサービスを提供してきました。
◆ 実行性の高いアドバイスを提供することを特徴としています。
財務・会計・税務・税関に関するプロフェッショナルなサポートをお求めなら、ぜひ私どもにお気軽にご連絡ください。
本記事は DENCHI が中国の公開法令・実務に基づいて作成した解説です。制度は改正されることがあるため、実際の処理にあたっては最新の規定および所轄当局にご確認ください。
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